『魏志』倭人伝の「卑弥呼」についての記述を和訳と英訳で、、、

日本人には『魏志』倭人伝という名前(歴史用語)はかなり馴染みがあるだろう。
多くの日本人にとって、邪馬台国は興味の対象であり、卑弥呼なる女王がミステリアスだからだ。

本記事では『魏志』の内容を少しだけ紹介したい。
ただ、『魏志』の原文は漢文であり、旧字も使われているために読みにくい。

そこで、今回は、『魏志』倭人伝が描く卑弥呼を和訳と英訳とでみていこう。
英訳は比較的簡単な文構造なので、語句の簡単な解説のみを付けておく。

⇒その国は元々は、男の王が治めていた。
70年か80年ぐらい経つと、倭国は乱れて争いが絶えなかった。
そこで、一人の女性を共立して王とした。
名を卑弥呼という。

The country formerly had a man as ruler.
For some seventy or eighty years after that, there were disturbances and warfare.
Thereupon, the people agreed upon a woman for their ruler.
Her name was Himiko.

formerly=元は、以前は、昔は、かつては
ruler=支配者、統治者
disturbance=混乱、妨害、騒動
warfare=戦争、交戦状態、戦闘
thereupon=そこで、その結果、それに続いて
agree upon=~に合意する、~について意見がまとまる

⇒卑弥呼は鬼道に通じ、人々をよく惑わした(=巧みに治めた)。
卑弥呼は年長であったが、夫はいなかった。
弟がいて、卑弥呼が国を治めるのを補佐した。

She occupied herself with magic and sorcery, bewitching the people.
Though mature in age, she remained unmarried.
She had a younger brother who assisted her in ruling the country.

occupy oneself with ….=~に従事する、~に専念する
sorcery=呪術、巫術、妖術
bewitch=魔法をかける、魅了する、惹きつける
mature=成人の、大人の、成熟した
remain=~のままである
unmarried=未婚の、独身の
assist=手助けする、援助する
ruling=動詞rule(=支配する、統治する)のing形

⇒王となった後の卑弥呼に朝見できた者はほとんどいない。
卑弥呼には千人の侍女がいたが、男で仕えていたのは一人だけであった。
その男子が飲食物の世話を行い、卑弥呼の言葉を伝える仲介者の役割を果たした。

After she became the ruler, there were few who saw her.
She had one thousand women as attendants, but only one man.
He served her food and drink and acted as a medium of communication.

attendant=従者、付き人、お供
serve=出す、提供する、給仕をする
act as ….=~の役を務める、~として活動する
medium=媒体、媒介物

ここまで見てきたように、『魏志』描くところの卑弥呼の記述は和訳や英訳で読むと、別に難しくない。
では、最後に、少しだけ原文(=漢文)を紹介しよう。

⇒其國本亦以男子為王
住七八十年 倭國亂相交伐歴年
乃共立一女子為王
名日卑彌呼 事鬼道能惑衆
年己長大 無夫壻 有男弟佐治國

いかがですか。
旧漢字を含む漢文は読みにくいですよね。

やっぱり、『魏志』倭人伝は和訳か英訳で読むのが楽だ。
では、本記事はこの辺にしておこう。