いつの世も詐欺のネタは尽きない。
混迷の現代を生きる人々は、老若男女問わず、心に深い悩みを抱えている。
その間隙を狙い、セミナーやカウンセリングの名を借りて金を巻きあげようとするのが「心理学商法」である!
ん、そんな用語あったっけ、、、まあ、よしとしよう、ハハハ。
この嘆かわしい現状を憂い、ついに磯貝老師が立ち上がった。
今回は、筋トレモチベが上がらない自分を卑下する青年と我らが老師との対話である。
悩める青年:初めまして、鈴木健一郎といいいます。
磯貝老師様、本日はよろしくお願いします。
磯貝老師:おいおい、「様」はいらないよ、鈴木君、で今日はどんな相談だい。
鈴:はい、老師、実は筋トレをやろう、やろうと思うのですが、モチベーションが上がらないというか、ジムに入会する決心がつかなくて、、、
そんな時に、ネットで「筋トレを始められない理由は『自己受容』がないからだ」と説明している記事を見つけたんです。
まず、「ありのままの自分を受け入れることができれば筋トレモチベが上がる」と説明していて、「初心者の自分を卑下するな」「筋力がない自分を責めるな」「失敗する自分を受け入れよう」とか言われると妙に納得できるんです。
自分が今まで筋トレを始められなかった理由をズバリ指摘されているようで、、、
磯:ふ~ん、で、その記事は「自己受容」とやらがテーマなのか。
鈴:そうなんですよ。
最初は筋トレがテーマかなと思ったら、自己受容の話が中心で、「自己受容こそが最大のカギで、自己受容が低いままだと新たなチャレンジができないので、自己受容を高めることが不可欠。こちらでは自己受容向上を目指す人をコーチしていますので、本気で変わりたいのなら無料コーチングを受講しませんか」っていう話なんです。
なんか、興味が出てきて、無料なら試してみようかなとか心が傾いているんですけど。
磯:なるほどな~、ところで鈴木君はなにか運動歴はあるのかい、部活動とか地域のスポーツクラブとか。
鈴:いえ、特にないんです。
どちらかというと、インドア派で読書とか音楽が趣味ですね。
磯:うん、で、本や音楽鑑賞が好きな君が、なぜ筋トレを始めようとしたんだい、そもそもの話が。
鈴:はい、ちょっと前から筋トレがブームになっていて、そのメリットがいろいろ紹介されていますよね、メディアでもネットでも。
筋トレが全ての悩みを解決するとか、筋トレこそ成功へのカギだとか説いているインフルエンサーは多いし、筋トレの効能を謳ったネット記事なんかもよく目にします。
そういう情報に触れていると、自分も筋トレを行って毎日を充実させて、人生を生き生きと送ろうかなと思い始めて、、、
磯:ん~、確かに筋トレやって筋力・体力が向上すれば、心理面や肉体面でプラス効果が現れそうだというのは否定しないよ。
鈴木君はそこまで筋トレに魅力を感じているのに、「いざ、やろう」と踏み込めない原因が、その自己受容云々にあると感じているんだな。
まあ、心理学は門外漢だから、断言はできないけど、運動経験のない君がジム通いに躊躇するのはごく自然な感覚だと思う。
わざわざ、自己受容とか言わなくても、未経験の活動に挑戦するのは誰だって尻込みしがちじゃないかな。
なんか、俺に言わせると、その自己受容コーチだかトレーナーは、怪しい匂いがするんだよな。
最初は無料お試しセミナーに誘って、その後で有料のコーチングとかなんとか説明してなかったかい?
鈴:そうなんです。
まず、無料の40分のセミナーに参加しませんかとの誘いがあって、本格的なセッションは希望者のみだと記事に書いています。
磯:う~ん、典型的な自己啓発セミナー商法だな。
そういう連中は、適当な心理学用語をちりばめながら、妙に説得力のある話をするのがうまいんだよ。
油断すると、コロッと乗せられてしまうぞ。
話術が巧みな占い師とかが、当たりさわりのない話をしながら、相談相手を信用させると同じで、その自己受容トレーナーから心理学の概念とかを絡めて説明されると、ついつい信じてしまうんだよ、君のような単純、いや、素直な青年はな。
悪いことは言わないから、人生の先輩からのアドバイスだと思って、そのセミナーだとかには参加しない方がいいよ。
鈴:そうですか。
老師がそう言われるのなら、、、でも、筋トレにも未練はあるし、、、
磯:鈴木君は難しく考えすぎじゃないかな。
要は、これまでよりも体を動かせばいいんだろう。
自宅で腕立て伏せをやるとか、通勤の際に会社から一駅前の地下鉄だかバス停だかで降車して歩く時間を増やすとか、そういうハードルの低い運動から始めて、徐々にモチベーションを上げていったらどうだい。
鈴:そうですね~、そう考えてみると、取り組みやすいのかもしれませんね。
費用もかかりませんし。
磯:そうだよ。
実は、俺の友人で高い会費払ってジム会員になっているのがいるけど、週に一回しか通っていないんだよ。
それも、準備運動して、チョット腕立てして、すぐ休憩して、スクワット短時間したかと思ったら、また休憩に入って、という体たらくでな。
ジムに一時間滞在しても、実際に運動している時間は20分程度だ。
そのくせ、「週一筋トレ後の、酒は美味い」とか自己陶酔に浸っていてな、ホント、気楽なやつだよ。
鈴:え~、なんだか、老師の友人だから言いにくいですけど、その人って理想が低いというか、自己肯定感が強すぎるというか、とことん自分に甘い性格ですね。
磯:鈴木君の指摘通りだよ。
酒を楽しく飲むためだけに、週一ジム通いでお茶を濁して自己満足、つくづく能天気な人間だよ。
学生の頃からの付き合いだから、腐れ縁でな、、、
鈴:あ~、でも、そういう低レベルの目標達成でも幸福感は得られるんですね。
なんか、ちょっと眼からウロコです。
やる前から、少し気負い過ぎていたのかな。
磯:そうかもしれないな、鈴木君の場合。
まあ、人間は気の持ちよう次第だよ。
俺の友人のように、大したことはしていないのに、やたら達成感を持つことができるというのも一種の才能かもな。
あいつは長生きするぞ。
鈴:老師、なんだか、今日は老師のお話と友人の具体例とが相まって、大変わかりやすく、ためになりました。
あんまり、気張らずに軽く身体を動かす程度で始めてみたいと思います。
自己受容セミナー受講はやめておきます。
磯:うん、それがいいと思うよ。
少しずつ運動に体が慣れてきたら、それこそ自然に「ジムに入会しよう」という気になるかもしれないぞ。
君は若いんだから、自分自身を長い目で見てやっても罰は当たらないよ。
鈴:はい、老師、本日はどうもありがとうございました。
磯:うん、また何かあれば、いつでも相談に乗るぞ。
◎鈴木君との対話を終えて、磯貝老師の独白
最近、筋トレがもてはやされ過ぎではないだろうか。
確かに、筋トレを実践するとエンドルフィンだドーパミンだテストステロンだとかのホルモンが分泌されるのは証明されているようだ。
ただ、筋トレすれば成功するとかの主張は、多分に体験談的なものではなかろうか。
つまり、数万人規模の調査とかでデータを積み重ねた上ではなくて、筋トレ本の著者とかネット記事の執筆者が筋トレに励んでいて、たまたま仕事もうまくいったとか、要は「個人の感想」にすぎない可能性がありそうだ。
別の言い方をすると、「筋トレしたから成功した」という因果関係を導き出すのは論理の飛躍だと感じている。
あと、筋トレというかフィットネス業界が儲かるからというのもある。
なんせ、数千億規模の金が動いているので、宣伝にも力が入ろうというものだ。
筋トレ本や筋トレ礼賛記事を単純に信じてジムに入会する人間が増えれば増える程、フィットネス業界全体が潤うことになる。
当然、そのおこぼれを頂戴しようと詐欺まがいの自己啓発セミナーが跳梁跋扈することになるわけだ。