現代のAIは星新一のショートショート『妖精配給会社』を現実化した!

まず最初にお断りを。
本記事には、星新一氏の『妖精配給会社』のネタバレがあります。

星氏の作品で描かれる「妖精」とは、宇宙から飛来してきた小型の生物。
大きさはリス程度で、体は地味な灰色、翼があり、少しだけ空中を飛べるという謎の存在。
この正体不明の小動物に、人が「妖精」という名前を付けたいう設定のショートショート。

妖精は、知能は低いのだが、人の言葉を話すことができる。
そして、妖精はとにかく飼い主に寄り添い、人間を褒めたり、慰めたりするのが上手い。
人を称賛する妖精の言葉の巧みさは「文豪に匹敵する」ほどの天才ぶり。

絶対に飼い主に逆らわず、徹底的に人を誉めたてる。
人間はやがて、家族や友人との付き合いよりも妖精と時間を過ごすことを優先するようになる。

異性との交際をやめる人々や離婚する夫婦が激増し、他人と交流する機会も激減していく。
多くの人々は、妖精からの美辞麗句に夢心地となり、自宅にこもり、活力を徐々に失っていく。

とまあ、かなりのネタバレ。
さて、実家の本棚に眠っていた『妖精配給会社』(新潮社文庫)を先日、読み返してみて、ふと「これって、AI依存の危険性と似ているんじゃないの」と感じた。

AIを使ったことがある人は、何度も経験し、気づいているだろう。
なぜか、AIが利用者を褒める傾向を持つことを。

ブログ主が、AI相手に対話していると、こちらの問いに回答したあとに「あなたの視点はとても鋭いです」とか「あなたの質問は知的好奇心と深い洞察力の賜物です」とかコメントしてくることが多い。

こちらは、別にお世辞を求めているわけではないのに、どうもAIは標準仕様でも使用者に寄り添おうとする姿勢(?)を見せてくる。
AIには感情がないことは、百も承知ながら、褒められるとまんざらでもない。

もし、利用者が「褒めて欲しい」とか「慰めて欲しい」とAIに指示すれば、その要望に沿ってAIは人を褒めたり、慰めたり、励ましたりする回答を瞬時に作成するはずだ。
おそらく、そういうカスタマイズを行っているAIユーザーもいるだろう。
私の身近にはいないと思うが、AIを「彼氏」「彼女」「夫」「妻」仕様に設定している利用者もいるそうだ。

AIを相談相手にしたあげく、自殺した人もいるとネットニュースで読んだ記憶もある。
一方で、星氏の手による「妖精」は、人を死に導いたりはしないようだが。

架空の妖精は生物で、現存するAIは無生物。
現在、PCやスマホの中に棲む(?)AIではあるが、今後さらに技術が進めば、精巧な超小型ロボット(ネコ型・イヌ型・リス型など)と一体化して、疑似生物化するかもしれない。

そうなると、可愛い猫ロボに話しかけたら、飼い主(?)を100%肯定する誉め言葉を並べてくる。
声質も様々な調整が可能となるかもしれない。
男性のオタクたちは、美少女AIロボにアニメ声を搭載した機種を購入して、自宅に籠りっきりになったりして、、、
なんか、ちょっと怖いな、、、別にオタクに対する差別意識はないが。

さて、『妖精配給会社』では、耳が不自由なために妖精の甘い囁きとは無縁の男性が「妖精は他の星から偶然に流れ着いたのではなく、計画的だったのでは、、、」とか「人類の発展をさまたげるのが目的かもしれない」と冷静に想像する場面でエンディングを迎える。

妖精に甘えきって、活力や思考力を失った人類の姿にうっすらと恐怖を覚える読後感。
なんだか、これも過度のAI依存がもたらす危険性を、星新一氏が数十年前に予感していたような、、、、

ただし、妖精とAIとの違いも少しだけ考察してみたい。
妖精は人を褒めたたえる一辺倒だが、AIの場合はユーザーの指示次第でどうにでもなる。

利用者が「褒めなくていいから、現実的な助言を与えてほしい」と打ち込めば、それに相応しい回答をAIは打ち出してくるだろう。
ユーザーが「私が提案した内容を論理的に分析し、評価できる部分と評価できない部分とに分け、それぞれ理由を説明してほしい」とか依頼すれば、その案をプラス面とマイナス面の両方から考察した回答をするだろう。

要は、AIをいかに使用するかが、カギとなるはずだ。
以前にも書いたような気がするが、AIべったりで100%依存するタイプにはなんの自力もつかないだろう。
その一方で、AIを賢く利用する地頭のよい者は、大きな成果をあげるはずだ、そう、将棋の藤井名人のように。

それにしても、星氏が創作した「妖精」と現代のAIには、かなりの類似点があると思う。
このテーマはもっと時間をかけて掘り下げたら、興味深い点がいろいろと出てくるかもしれない。
また機会をみて、、、