王者川口と語る大東亜戦争開始前の舞台裏 ~ 日本の暗号は解読されていた!

ふと思えば、最近、絶対王者川口が姿を現していない。
十二月中に一度でも登場してもらわないと、令和7年が終わってしまう。
というわけで、今回は久しぶりの川口との対談と相成りましたとさ。

王者川口:いや~、久しぶりだね~。
新作がアップされる度に目を通しているけど、もう500記事を超えたんだ~。

ブログ主:いつも、気にかけてくれてありがとう。
閲覧数がカウントされる度に、励まされているよ。

川:うん、なにかしら文章を読むのが習慣になっているから、このブログにはちょくちょくアクセスしてるよ。
で、早速だけど、この間の『外交官の不手際のせいで、、、』を確認して、すぐに思ったのがアメリカの暗号解読能力の凄さ。
確か、東京からワシントンの日本大使館に送った暗号文はすべて解読されていたはず。

ブ:指摘通り。
あの記事では、外交官の不手際に焦点を当てたかったから、そのあたりは触れなかったけど。

川:アメリカ側は日本の暗号電文を傍受するとすぐに、テレタイプでワシントンに送り、それを暗号解読班が解読・翻訳して次々と大統領に届けていったんだよね。
だから、モタモタしてた日本大使館よりもかなり早い段階で日本の最後通告の内容を把握していたみたいだ。

ブ:正確な時刻は伝わっていないけど、真珠湾攻撃の数時間ないしは十数時間前には、ルーズベルト大統領やハル国務長官は日本が宣戦布告することを知っていたんだ。
情報戦の時点でアメリカが一枚も二枚も上手だよ、くやしいけど。

川:そうだね。
野村大使からハル長官が最後通告を受け取ったのが、真珠湾攻撃の1時間後。
怒りに震えたハルが「自分はいまだかって、このような恥ずべき偽りと歪曲に充たされた文書を見たことが無い」と言ったとか。
つくづく、ハルって役者だよね~。

ブ:ホント、そうだよな。
猿芝居というか、ハルは知っているのに知らんふりをしてな、、、

川:ん、「知っているのに知らんふり、なぜ~、なぜ~なの」とかなんとか、芸人のギャグか持ちネタがなかったっけ?

ブ:記憶ミスでなければ、本来は安西マリアの歌『涙の太陽』の歌詞を誰かが切り取って口ずさんでいたような、、、

川:そうなんだ、安西マリアの歌が元ネタだったのか。
まあ、常連さんの誰かが情報提供してくれるよ、知っていたら。
で、話を戻すと、ハルは後にこの場面を回想して「私はすでに知っていたので、知らないふりの演技をするのが大変だった」という意味の文を書き残しているよ。

ブ:ルーズベルトにしろハルにしろ、日本の機密情報を握っておきながら100%被害者を演じて、「だまし討ち」の大合唱へとアメリカ世論を導いたんだ。
開戦前に、連合艦隊司令長官山本五十六大将が最後通告文書は真珠湾攻撃予定時刻よりも前に届けるよう何度も関係各所に念押ししたし、当然外務省もそれに合わせて手交時刻を大使館に暗号で指示したんだが、、、

川:本来なら、攻撃開始の30分前にアメリカが受け取るはずが、例の外交官のモタモタで、、、
山本五十六さんは終生、「だまし討ち」と非難されたことを気に病んでいたみたい。
昭和18年4月に戦死し、国葬になるんだけど、アメリカにしてみれば敵討ちになるんだろうね。

ブ:ふざけてるよな、アメリカの言い分は。
日本の対米宣戦布告を事前に知っていたくせに、、、って情報戦も戦争だからな、日本の暗号技術が未熟だったまでか。
それにしても、米の解読術は進んでいたんだな。
山本五十六大将の戦死も、米側が暗号を解読し、山本機と護衛機隊を米のP38戦闘機部隊が待ち構えていて攻撃したからだ。

川:暗号を解読する一番いい方法は、ずばり盗むことらしいね。
ここでいう「盗む」の意味は、敵方に悟られないように機械なり暗号書のコピーを取ることで、国際情報戦では常識中の常識らしいね。
あの当時の日本の暗号機械といえば、、、

ブ:うん、ものの本によると、海軍が開発した「九十七式印字機」という最新の暗号機。
解読不可能と評価されていたけど、米側のスパイも暗躍していたから、暗号機の設計図とか暗号書のコピーが人知れずアメリカ側に渡ったのかもしれないな。

川:その可能性は否定できないと思うよ。
アメリカがこの暗号を「パープル(紫)」と呼んでいたのは有名な話。
で、日本の基礎暗号書の表紙が紫色だったから、はたして、これは偶然の一致かな~、と疑うよね。

ブ:怪しいよな。
まあ、アメリカは盗んでいたとしても絶対に認めないだろうけど。
あと、川口も知っていると思うけど、NHKの海外向け短波放送でも日本は秘密の指示を行っていたよな。

川:例の「東の風、雨。東の風、雨」とかいうやつね。
これが「対米開戦、米領各在外公館は暗号書を焼却せよ」の意味の暗号だったとかいう。
でも、これも米側は気づいていて「ウインド・メッセージ」という名前まで付けていたんだってさ。

ブ:ホント、日本は手の内をほとんど読まれていたんだ。
なんとも、、、
日本の国民は「ただいまニュースの途中でありますが、本日は特にここで気象通報をお知らせします。『西の風、晴。西の風、晴』、、、」とかNHKが放送しても何の疑いも抱かなかったけど、アメリカは隠されたメッセージを解読していたんだな。

川:ミッドウェー海戦にしても事前に暗号を読んでいたから、米側は日本の空母撃滅を最優先した作戦行動をとれたんだ。
一方、日本連合艦隊は「ミッドウェー島攻略および敵空母の補足・撃破」と目的を二つ掲げたから、用兵の大原則「意志と力の集中」を破ってしまい、結果は、、、

ブ:おまけに、アリューシャン列島占領を同時進行させたせいで、戦力の分散を招いてしまった。
あんまり「たられば」は語りたくないけど、アリューシャンに向けた空母龍驤と隼鷹がミッドウェー海戦に参加していたら、大敗どころか、米空母機動部隊を壊滅させていたのでは、とか反実仮想してしまうな。
まあ、ミッドウェー・アリューシャン作戦は山本長官自身の発案ではなく、主席参謀の黒島亀人大佐を中心とした幕僚チームが練り上げたものだったらしい。

川:黒島参謀は山本さんのお気に入りだったとか。
その黒島参謀は奇行・奇癖で有名だった一方で、その振る舞いは日露戦争時の名参謀秋山真之を意識した「変人ポーズ」だったと疑う人もいるしね。
あれ、なんか、開戦前の舞台裏から話がそれてきたぞ、、、

ブ:ハハハ、まあ、いいじゃないの、感興のおもむくままで。

川:だよね。
じゃあ、開戦前後に戻るとして、最大のトピック「真珠湾攻撃陰謀説」に行きますか。
ルーズベルトが真珠湾攻撃を事前に察知していながら、故意に放置しておいたという説ね。

ブ:う~ん、真相の究明は難しいよな、なんとも。

川:アメリカが知っていて真珠湾の米軍を見殺しにしたのなら、日本人は「だまし討ち」と非難される謂われはなくなって、逆にルーズベルトやハルの欺瞞を糾弾できるよね。
さらに、ルーズベルトがアメリカ国民から責任追及されそうだから、日米双方にとって大きな論点だよ、扱いはちがうけど。

ブ:だよな。
日本の場合は、免罪符となるからな、さんざん「だまし討ち」と責められたことの。
一方、もし本当にルーズベルトが「知っているのに知らんふり」なら、米にとっては一大事だ。

川:なんともね~、「知ってた」派と「知らなかった」派の両陣営はそれぞれもっともらしい説明や推理を展開しているけど。
その辺を詳しくみていくと、二人で何十回話しても終わらなさそう。
かといって、これで〆るのも芸がないかな?

ブ:せっかく久しぶりの登場なんだから、川口の好きなように語ってみてよ。

川:では、まず、日本外務省の対米最後通告文書が手交前に暗号解読されていたのは、アメリカも認める事実で間違いないけど、その文面には真珠湾攻撃の情報は含まれてないよね。
となると、帝国海軍の暗号の方は米側も解読不能だったのなら、ルーズベルトは知らなかったことになる。
でも、日本海軍の暗号判読にも成功していたのなら、米政府は事前に真珠湾攻撃を知っていたはず。
知っていながら米政府がハワイに伝えなかったから、真珠湾奇襲により米軍が大被害を受けたというのが「真珠湾攻撃陰謀説」というわけ。
もし、この陰謀論が真実なら、ルーズベルトは自国民を裏切った大悪党と罵倒されても仕方ないんだけど。
う~ん、どうなんだろうね~。

ブ:その陰謀論は信奉者にとっては「真相」なんだろうけど、その出どころについては?

川:うん、開戦直後からアメリカ国内では真珠湾攻撃の責任を問う動きがあって、現地ハワイの軍司令官が職務怠慢と批判されたんだよ。
でも、責任を取らされたキンメル大将とかショート中将にしてみれば、政府首脳部は知っていながら自分たちに情報を提供しなかったと反論したくもなるんだろう。

ブ:日本人の「知っていた」派としては、どんな根拠を挙げているんだっけ。

川:まず、攻撃当日の真珠湾に米空母がいなかったから、「知っていて空母は逃がしておいた」説が根強い。
それから、オアフ島の北半分だけ米軍の哨戒機が飛行していなくて、まるで「ここから入って来い」と言わんばかりだったとか。
あと、ミッドウェー海戦の際に海軍暗号が解読されていた事実から、開戦前にもすでにアメリカは海軍暗号を攻略済みだったと推測する研究者もいるしね。

ブ:日本海軍のある軍人は、アメリカの人命尊重の熱意を思えば、何千人もの命を犠牲にしてまで故意にハワイを見捨てたとは到底考えられないと語っているしな。
確かに、「知っていた」説は日本人にはウケると思うけど、そこまでルーズベルトやハルが冷酷な態度がとれるかな、自国民に対して。
結局のところ、川口はどう思っている?

川:そうだね~、なかなかスパッと白黒つけられないけど、どっちかといえば「知らなかった」派かな。
開戦直後に日本の攻撃があることは予想していたけど、厳密に「いつ」「どこで」「どのように」に関してはアメリカも読めてなかったんじゃないかな。
いきなり、日本海軍が空母六隻の機動部隊を繰り出して三百数十機の航空戦隊で真珠湾を襲うとまでは想定していなかったと思うね。
頭の中に「真珠湾に来るかも」の予感はあったのかもしれないけど、あれほど大規模で大胆な攻撃は予想してなかったのでは。

ブ:そうだな。
実際には、日本海軍機動部隊が一回で攻撃を切り上げたけど、もし第二回攻撃を実施していたらアメリカ側の被害はさらに甚大なものになっていたはず。
だから、米首脳が知っていて隙をみせたのが本当なら、ルーズベルトはハワイの米軍施設が全滅してもかまわないと判断したことになる。
それは、ちょっと賭けとしては危険すぎるから、やはり「知らなかった」説のほうが妥当じゃないかな。

川:そこも大事な点だね。
真珠湾攻撃の総指揮官淵田中佐としては、第二回攻撃で米の軍事施設と重油タンクを狙いたいと意見具申したんだけど、上層部の南雲中将や草鹿参謀長が承認しなかったから相当不満だったってさ。
これについては、戦後に来日した米海軍の関係者が「日本はなぜ、ハワイの軍工場、燃料タンクを破壊しなかったのか。真珠湾は離島の基地だから、燃料や資材の補給が困難だった。その被害を免れたから、基地の立ち直りが早かった」と語っているよ。

ブ:それで、南雲中将は後から批判されたんだよな、腰が引けていたとかなんとか言われて。
と、こんな感じで続けていくとキリがないから、今回はこの辺にしておこうか、川口。

川:うん、そうだね。
また、改めて今日の続きから始めてもいいし、なんだったら全然別の話題でもいいしね。

ブ:じゃ、またの機会にゆっくりとやろうぜ。