参政党躍進には、世界も注目しているようだ。
英国BBCも、関連記事を挙げている。
今回は、BBCが参政党現象をどのように報じているかをざっと見ていこう。
◎ 参政党をハッキリ「極右」と位置づけ
記事の冒頭で、「Last Sunday, a once obscure far-right party, Sanseito, surged from,,,,,」と書き、参政党を「far-right=極右」と断じている。
(ただ、本文中に「極右」の定義はないようだ、こちらの見落としでなければ。)
また、BBCは、これまでの日本の政治は退屈なほど安定しており、他国のようなポピュリズムとは無縁だったと分析する。
その日本で、なぜ「極右」が台頭してきたのかに対する問いに対して、以下の要因を挙げている。
◎ 米問題、アメリカファースト、迷惑な外国人など
米高騰に関しては、海外メディアに言われずとも、日本人にとって嫌になるほど実感できる話題だから、割愛しよう。
まず、BBCは、参政党現象出現にトランプ大統領の「アメリカ・ファースト」の影響が見られると指摘。
本文中で、米テンプル大学ジェフ・キングストン教授の「トランプ氏が世界中の人々の根源的な部分を勢いづかせている」という見解を引用している。
(この「根源的な部分=the primordial」に関しては、一番最後に「追記」の中で解説したい。)
つまり、いわゆる「MAGA」運動が、米だけではなく、世界各国の多くの人々に力を与えていると考えているようだ。
BBCは、米の共和党や世界の右翼政党・運動は「移民問題」に焦点を当てており、参政党もその動きの中にあると概観している。
また、日本の移民受け入れに関しても、基本的な情報を提供しながら、参政党党首・神谷氏の「排外主義を進めたいわけではない。外国人受け入れのルールをしっかりと整備しないから、国民が不安と不満を抱えている」という発言も紹介している。
外国人観光客の迷惑行為についてもある程度言及し、例えば、明治神宮の鳥居への落書きや河口湖町の住民を悩ませた自撮り行為等もBBCは報じている。
日本人が外国人のマナーの悪さに困惑し、怒りを覚えている様子が英文読者に伝わりそうな書き方だ。
その一方で、参政党が主張する外国人問題の中には、虚偽情報も含まれているとの見解も、某大学講師の発言を引用する形で紹介している。
◎ 神谷氏のトランプ敬愛、政策よりも熱意、自民保守層の離反など
前段と関連するが、参政党神谷党首がトランプ大統領の政治姿勢に敬意を持っている事実や、いかにもトランプ風の発言「ディープ・ステートはあらゆる分野にいる、メディア、医療界、農業、霞が関などのいたるところに」を引用し、神谷氏の政治姿勢はトランプの「大胆な=bold」な行動スタイルに影響されていると説明する。
その際に、直訳すると「トランプの崇拝者」となりそうな「Trump admirer」という呼称を、BBCは神谷氏に与えている。
神谷氏を「Trump admirer」と定義づけると、欧米の読者には、神谷氏の思考・行動様式が非常にわかりやすくなる。
ただ、それが、神谷氏の実像と一致するかどうかは一考の余地がありそうだが。
前出のキングストン教授は、参政党躍進の秘密はその政策というよりも、有権者の熱意・熱情へのアピールとソーシャルメディア活用にあると考えている。
参政党の主張の内容よりも、有権者の心に響くようなメッセージの届け方が効果的であったと教授は分析する。
感情に訴えるというか、「この神谷という人物は、現状を変えてくれる気がする。自分たちの問題を解決してくれそうだ」と、30代・40代の有権者に思わせた部分が大きいと解説。
加えて、これまで自民党を支持してきた保守層の多くが、参政党に投票したと指摘。
故安倍元首相の後継者は、岸田にしろ石破にしろ、保守派から見れば魅力を感じないとBBCは見る。
また、キングストン教授は、「極右の有権者は家を失ったようなものだ。自分たちの立場にしっかりと寄り添う政治家を求めていたところに、神谷という熱烈な代弁者が登場した」と説明し、自民から参政党に保守票が流れたと分析する。
◎ おわりに
今回の記事は、BBCによる「The rise of Japan’s far right was supercharged by Trump – and tourists」の内容をもとに、作成した。
本文中の引用部は、ブログ主が英文を直訳したり、若干意訳したり、少し情報を加減して用いている。
興味のある方は、ぜひ、ネット上で元の英文記事に目を通していただきたい。
*追記
元の英文記事に「Trump is empowering the primordial in people all over the world」とあり、この「the primordial」を「根源的な部分」と、とりあえずは直訳した。
しかし、この部分は、意訳すると以下のような例が考えられる。
⇒トランプは、世界中の人々が本来持っている、原始的で動物的な本能・欲望を煽っている。
つまり、社会的な制約や理性などを取り払ったあとの、人間の剝き出しで感情的な面を「the primordial in people」で表している。
攻撃性、部族主義、よそ者嫌い、支配欲、集団への忠誠など、要は、リベラル派が嫌うであろう、人間の生々しい感情・情念といったものである。
周知のとおり、BBCは左傾メディアである。
あのハマスを、「テロ組織」とは決して表現しないほどだ。
従って、BBCが「極右」と定義した人物や団体を、必ずしも当ブログや常連の皆さんが「極右」と判定するとは限らないだろう。