前回の「仏さまもいろいろ」で、如来・菩薩・天という三つの「仏さま」を紹介しました。
今回は、明王さまの話です。
大雑把に言うと、諸仏は四つのカテゴリーというかジャンルに分類されています。
それが、如来・菩薩・明王・天という四タイプ。
では、前回の復習も含めて、以下にその内容を。
*如来=「覚りをえた者」「真実から来た者」という意味で、諸仏の中の最高ランク。
⇒釈迦如来、薬師如来、阿弥陀如来、大日如来など
*菩薩=「人を救いながら、如来になるための修行に励んでいる者」を表す。
⇒観音菩薩、弥勒菩薩、文殊菩薩、普賢菩薩、地蔵菩薩など
*明王=サンスクリットで「知識」や「学問」を表す語を漢訳したものが、「明」であり、密教では「真言」「呪文」のこと。
従って、「明王」とは「呪文の王」が文字通りの意味となるが、密教では教えに帰依しないものを教化する役割を持つ仏さまのことである。
⇒不動明王、降三世明王、軍荼利明王、大威徳明王など
*天=サンスクリットで「神」を意味する語を漢訳したもので、バラモン教やヒンズー教の神々を仏教に取り込んだもの。
⇒梵天、帝釈天、四天王、弁財天など
一般的には、上記の四つは諸仏のランク付けにもなっています。
如来が一番上、菩薩が二番手、三番手が明王で、一番下のクラスが天となります。
天が最下位なのは、仏教以外の宗教や神話から迎え入れられた存在だから、仏教側が如来や菩薩の下に位置付けるのは自然な流れですね。
明王も、天と同様に、古代インド神話やヒンズー教に出自を持つ尊格ですので、如来や菩薩の下に置かれています。
ただし、この明王の立ち位置には要注目のポイントがあります。
それは、密教の最高仏である大日如来と明王の関係です。
密教では、如来や菩薩でも教化できない衆生を力づくでも従わせる役目を持つのが明王だとされています。
その際に、密教の最高存在・大日如来が不動明王に変身して人々を救いに導くわけです。
要は、密教の世界では、「大日如来=不動明王」ですから、明王は最高仏とみなすこともアリですね。
となると、「如来⇒菩薩⇒明王⇒天」の序列も、明王に関しては一概には言えないようです。
では、代表的な明王さまを以下に挙げましょう。
*不動明王=大日如来の化身で、明王界のドン。
以下の四明王と共に、「五大明王」と呼ばれています。
*降三世(ごうざんぜ)明王=阿閦(あしゅく)如来の化身
*軍荼利(ぐんだり)明王=宝生(ほうしょう)如来の化身
*大威徳(だいいとく)明王=阿弥陀如来の化身
*金剛夜叉(こんごうやしゃ)明王=不空成就如来の化身
日本に真言密教を伝えた空海が、839年、東寺(教王護国寺)講堂に五大明王の像を安置しました。
不動さまを始めとして、明王は恐ろし気な形相をしている方々が多いです。
また、不動明王は一面二臂ですが、降三世さんは三面八臂、大威徳さんは六面六臂、金剛夜叉さんは三面六臂というふうに多面多臂の明王さまも複数存在します。
話はズレますが、永井豪さんの『デビルマン』の主人公は不動明(ふどう あきら)。
どうみても、不動明王からとったネーミングですよね。
それぐらい、不動さまの知名度が高いということでしょう。
では、本記事はこのあたりで。
前回と合わせて、仏さまの四つのジャンル「如来・菩薩・明王・天」を今後、お忘れなく。
常連の皆さん、よろしくお願いします。