後輩の酒井が倒れた。
日々の激務に体が悲鳴を上げたのだろう。
現在、入院中。
詳しい病状はわからない。
本人は自らを「病気の総合商社」と語り、周囲を笑わせている。
そういえば、昔、「疑惑の総合商社」と揶揄された政治屋がいたっけ。
地元の名士である酒井は、病院でもVIP扱い。
当初提供された豪華な個室を辞退し、今は四人部屋でクセの強い同室患者たちと仲良く(?)しているようだ。
今回は、酒井の闘病奮闘記の巻といきますか。
*登場人物=酒井、田中(=ナースコールジジイ)、村山(=頑固ジジイ)、岡田(=歯ぎしりジジイ)
もちろん、酒井以外は仮名でございます。
酒井については説明は不要であろう。
田中(仮名)は頻繁にナースコールを行うため、「ナースコールジジイ」と呼ばれている。
村山(仮名)は頑固者だから「頑固ジジイ」ってそのままかよ、ハハハ。
岡田(仮名)もアダナが語っているように、歯ぎしりを夜中じゅう奏でるタイプだ。
さて、ナースコールジジイはその名の通り、のべつ幕なしにコールボタンを押しまくる。
そう、看護師から最も鬱陶しがられるタイプだ。
多少認知症ぎみなのか、自分でボタンを押しておきながら、駆けつけたナースに「ん、俺押した、ボタン?」とのたまう。
酒井も大変だ。
手術後で安静・休養する必要があるのに、この「ナースコール田中」が食前食後にコールしまくるせいで気が休まる時がない。
消灯後、丑三つ時、午前5時、6時、7時、、、、とにかく四六時中看護師が出動してくる。
現在、酒井は慢性的な睡眠不足。
友人たちが差し入れてくれたリップマン『世論』や遠藤周作『海と毒薬』の貢をめくる気にもなれない。
しかし、『世論』はともかく、入院中の酒井に『海と毒薬』とはね、、、、
頑固ジジイの村山は、とにかく常に怒鳴っている。
妻が見舞いに来た瞬間に「はよ、帰れ!」、どこぞに電話して「『きのこの山』を五箱買ってこい」などなど。
常に殺気立ち、大声でがなり立てる、この村山という頑固ジジイには「同室に三人病人がいる」という事実が頭から完全に抜け落ちている。
鳥頭なのか、それとも性格破綻者なのか、頑固ジジイ村山の言動は支離滅裂である。
大声を出して、自分で奥さんを返しておきながら、1時間後には「あいつ、次はいつ来るのかな」などと呟く身勝手さよ。
病人は我儘になりやすいと世間では言うが、この頑固ジジイの場合は度を越している。
ホント、酒井の苦労がしのばれる。
でもなあ、酒井よ、先輩としてひとこと言わせてもらうと「なんで、個室から四人部屋に移ったんだよ」だ。
俺だったら、ずっと個室に居たいよ。
たまに「あれ、今晩はナースコールジジイがおとなしいな」と思いつつ、酒井がまどろみ始めると、カリ、カリ、カリ、キ、カ、キリ、カリ、、、、、と奇怪な音が。
そう、歯ぎしりジジイ岡田の独奏会だ。
言うまでもなく、このジジイの歯ぎしりは爆音いびきを伴う。
カリ、カリ、キ、、、、ゴォ~、ガォ~、、、カ、カ、キリ、キリ、カリ、カリ、、、、グ、グガッ、、ゴォ~、、、
歯ぎしりといびきの、それは筆舌に尽くしがたい素敵な子守歌だ。
もちろん、病室に響き渡る心地よい音色は他にもある。
ジジイどもの放屁だ。
どいつもこいつも、所かまわず、ぶっ放し放題の屁コキ三昧。
とまあ、下の話に流れるのは、ここで止めておこう。
以上のような、人間力を磨くのに最適な環境の中で、酒井は闘病生活を送りながら娑婆復帰を目指して奮闘努力の日々。
常連の皆さん、心の中で「立て、立て、立つんだ、酒井~」と励ましてやってください。
酒井よ、一日も早い退院と仕事復帰を祈っている!
立て、立て、立つんだ、酒井~、明日のために!
って、『あしたのジョー』か、ハハハ。